仙台高等裁判所 昭和45年(ネ)245号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕控訴人が昭和三五年四月一日川村徳助から本件土地を賃借したことは当事者間に争いないところであるが、被控訴人は右賃貸借は昭和三八年三月三一日をもつて期間満了により終了したと主張するので、この点について判断する。
まず、<証拠>によると、次の事実が認められる。
川村徳助は昭和三五年四月一日控訴人に対し、本件土地を含む盛岡市小人町一三番宅地一三三坪(同番の一、二と分割する前)を、バスターミナル施設の用地として使用させる目的で賃貸したが、実際は控訴人においてバスの出入口として使用するものであつた。控訴人バスターミナルとしての建物その他の設備は右一三番宅地の東側の土地上に建設されており、右一三番宅地はその一部がバスの出入口として使用されているほか何ら使用されていない(一時、バス駐車場として使用されたことがある。)。
右のように認められ、昭和三九年に控訴人が右一三番宅地上にバスターミナル事業とは直接関係のない貸ビルを建築しようと企画したこと(<証拠>により認められる。)以外には、控訴人において右一三番宅地の使用について何らかの計画があつたことは証拠上認められない。
右認定によれば、右一三番宅地の賃貸借は借地法一条にいわゆる建物の所有を目的とするものに該当しないと認められる。したがつて、右賃貸借については借地法の規定は適用されず、民法の規定によることとなる。
次に、<証拠>によれば、次の事実が認められる。
右賃貸借契約において、その期間は契約の日から満三年(昭和三八年三月末日まで)とされ、期間満了の際両者の合意をもつて更新することができるものと約定され、更に、借主控訴人は期間満了の一際右一三番宅地を適正な時価をもつて買い受けるものとすると合意された。川村徳助は、期間満了前の昭和三七年五月二六日付書面をもつて控訴人に対し、右賃貸借契約を同年五月末日限り解約する旨申し入れた。これに対し、控訴人は同年五月三〇日付書面をもつて川村徳助に対し、まだ賃借期間が残つていることでもあり引き続き賃借したい旨回答した。控訴人は昭和三八年四月一日頃川村徳助に対し、右賃貸借契約を更新したい旨申し入れ、契約書案(契約条項が記載され、控訴人の記名押印があり、川村徳助の住所氏名が記載されたもので、同人の押印さえあれば契約書として完成するよう準備されたもの)を送付したが、川村徳助は右申入れを拒否し、右契約書案に押印しなかつた。昭和三九年三月二日、控訴人の取締役会(川村徳助を含む。)において一三番宅地上に貸ビルを建てる案が相談されたが、川村徳助は右土地を賃貸するか売買するかの態度を保留した。その後、川村徳助と控訴人側の小原支配人とが交渉したが、小原支配人は賃料を改訂して賃借することも買い受けることも資金難の上からできないと言い、交渉はまとまらなかつた。控訴人の川村徳助に対する賃料支払は川村徳助の銀行口座への払込みによつてなされていたが、昭和三八年四月分以降も川村徳助の不知の間に引き続きなされ、後日川村徳助はこれに気付いて期間経過後(昭和三八年四月分以降)の分を返還した。
右のように認められる。右認定事実(期間は三年であること、期間満了の際双方の合意で更新できること、期間満了の際借主は時価をもつて目的土地を買い受けるものと予め合意されたこと。)の下においては、三年の期間はまさしく賃貸借の期間であると認めるべく、これを単なる例文にすぎないとか、地代据置期間にすぎないとかいうことはできない。控訴人は三年たつときは賃借土地を買い取るつもりで賃借期間を三年としたものであり、(この点は<証拠>によつても認められところである。)、三年の期間が経過したのち、売買契約も賃貸借更新の合意も成立しなかつたのであるから、控訴人はもはや一三番宅地に対し何らの権利も有しなくなつたといわねばならない。また、前記認定の事実関係の下においては、民法六一九条のいわゆる黙示の更新の推定は覆えされたものと認めるべきである。そうすると、前記賃貸借契約は昭和三八年三月三一日限り期間満了により終了したものといわねばならない。よつて、この点の被控訴人の主張は理由がある。
(松本晃平 石川良雄 小林隆夫)